株式会社Simplee諏訪実奈未さん 「子育てを理由に仕事や旅先での体験をあきらめない社会に」

株式会社Simplee(シンプリー)代表取締役の諏訪実奈未さんは「子育てを理由に仕事や旅先での体験をあきらめない社会」を目指し、オンデマンドでシッターを派遣するサービスを展開する。2024年度の毎日みらい創造ラボのアクセラレーションプログラムにも参加し、事業を拡大させている。
具体的なサービス内容を教えてください。
シッターを派遣するチャイルドケア(託児)サービスを提供しています。主な提供先は、子連れの訪日外国人や企業、コワーキングスペースなどで働く人たちです。私たちがホテルや企業などと契約し、そこの利用者(旅行者や社員など)の要請に応じてシッターを派遣する仕組みです。システム上で外国語対応を含め、顧客の要望に合ったシッターをマッチングでき、個人からの直接申し込みにも対応しています。ケース・バイ・ケースで対応していますが、基本の利用料金は1時間4000円から。60人超のシッターと派遣契約を結んでいます。
これまでに観光ホテルや旅行代理店などと提携を進めたほか、福利厚生の一環として導入してくれた大企業もあります。法人側がシッティングルーム(託児室)を常設するのは大変ですが、私たちのサービスを使えば必要な時にホテルの客室や会議室を託児室にでき、手軽に託児サービスを利用できるので喜ばれています。外国人の方には、お子さんに日本の文化体験をしてもらうサービスも実施しています。
どのようなきっかけで起業したのでしょう。
私自身の体験に基づきます。子育てをしながらの生活には多くの制約がつきまといました。当時勤めていた大手コンサルティング会社を時短勤務にせざるを得なくなったり、出張に行けなかったり。プライベートでは沖縄旅行でダイビングを体験できなかったり。コト消費やトキ消費が制限されると、日本の経済活動にもマイナスだと感じました。
その現実を変えるため、エンジニアとしての知識を生かして、親がシッターとマッチングできるアプリを作りました。短時間でプレゼンするビジネスコンテストで2022年6月に優勝して投資家がつき、同年に会社設立、23年に起業したという流れです。
当初は自分と同じような親、社員の子育てと仕事を両立させたい企業をメインターゲットと考えていましたが、途中で「私みたいな思いをするインバウンド客も多いんだろうな」と気づきました。
インバウンドに注力すると予想は当たりました。広告を打ったわけでもないのに、どんどんインバウンドのユーザーがつく。ホテルや旅行代理店経由ではなく、直接の問い合わせも多い。やはりコト消費したい人が多いのでしょうね。東京ディズニーランドや富士急ハイランドへの同行シッターのニーズもありました。
インバウンドに大きな需要があるんですね。
外国人の利用者の方からは「すごく助かった。ハッピーだ」「もう一度利用したいよ」という声をいただいています。インバウンド需要は今後も増えます。今では売り上げの7割がインバウンド、3割が国内の企業などです。
24年の訪日外国人旅行者数は3687万人でしたが、30年の政府目標は6000万人です。現状は首都圏中心の事業展開で、京都や北海道でも始めましたが、早く全国規模に広げたいと考えています。より効果的なマッチングを可能にするため、AI(人工知能)による全自動化を進めていきたいです。
Simpleeという社名には「子育ての複雑さをシンプルにしたい」という思いを込めました。私が目指すのは、チャイルドケアがインフラ化された社会です。「子育ても挑戦も楽しむ社会」「コト消費、ビジネスをあきらめない社会」を実現します。
諏訪実奈未(すわ・みなみ)
株式会社Simplee代表取締役。1994年、茨城県出身。2017年、慶応義塾大学総合政策学部卒業。在学中に女性向けマーケティング事業「キャンパスラボ」を創業。米系コンサルティング会社を経て、22年にSimplee設立。育児と自己実現の両立に関する登壇多数。
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