ビジネスの力で社会課題や地域の課題を解決したい――。こんな思いを持つ人を後押しするため、毎日新聞社の子会社「毎日みらい創造ラボ」(高塚保社長)は13日、東京都千代田区の毎日新聞社で、スタートアップ企業によるピッチイベント「第10回デモデー」(株式会社アガルート協賛)を開催した。
登壇したのは、みらい創造ラボのアクセラレーションプログラムとラボが受託した佐賀県の起業家支援プログラムにそれぞれ参加する11社、ラボと連携する北海道石狩市で地域課題に取り組む3社。毎日新聞社の末次省三執行役員らが審査し、グランプリには訪日客向けに高品質な保育サービスを提供する「Simplee」が選ばれた。
日本観光の可能性広げる
Simpleeの諏訪実奈未社長はプレゼンで「子連れゆえに観光体験に制約がかかってしまうことがある。せっかく訪日観光客を迎えるのに、家族旅行の消費を促せないのはもったいない」と指摘。「ホテルや飲食店予約サイトなどと連携し、お店とセットで託児が予約できる世界観を実現しています。日本観光市場の可能性を広げるインフラになっていきます」と抱負を語った。
Simpleeは、グランプリだけでなく、会場からの投票によるオーディエンス賞にも輝き、それぞれ賞金が贈られた。
佐賀県5社も熱弁
佐賀県のプログラムに参加している5社も、地域課題の解決に向けて熱弁を振るった。
このうち「FoodStock」は、地元で親しまれる味を冷凍技術によってアーカイブ化する事業を展開している。
野中一矢代表取締役は「2024年、後継者不足などで飲食店が1000件倒産した。日本の食文化が失われる危機だ」と訴え、「我々は地域の大切な食文化を守りながら、食の作り手、売り手、消費者の三方よしとなるサービスを目指していく」と表明した。毎日新聞社賞を受賞すると「非常にうれしい。これからも応援してほしい」と喜んでいた。
昨年の第9回デモデーでグランプリを受賞した幸海ヒーローズ合同会社も登壇した。同社は現在、石狩市で二酸化炭素の吸収量が多い昆布を育て、温暖化対策に取り組んでいる。富本龍徳CEO(最高経営責任者)は「(育った昆布による)バイオマス発電や、洋上風力の下での昆布栽培もやってみたい」と夢を語った。
閉会のあいさつで、末次執行役員は「いずれも素晴らしい内容だった。14チームの発表を聞いて、今の時代、課題解決を意識しなければ何事もなせないんだなと改めて感じた」と語った。
デモデーで発表したスタートアップは以下の通り。
【アクセラプログラム(6社)】
▽Simplee▽なかよし学園プロジェクト(発展途上国・地域のSDGsに関するコンサルティング)▽IMOCO(米国でサツマイモをヘルシー食品としてブランド化)▽sa-mo(昆虫由来の飼料により、淡水養殖のサーモンブランドを確立)▽MoonBase(子連れ家族向け体験型宿泊施設を運営)▽Sigiry(高齢者の入浴事故ゼロを目指すヒートショック対策デバイス販売)
【佐賀県の起業家支援プログラム(5社)】
▽FoodStock▽千紫万紅(カラーリングマム=染め菊=で推し活に参入)▽SpoWell Lab(スポーツ健康に関連する企画コンサルティング事業)▽JICU(食の応援者へ食べ物で返礼するプラットフォームを展開)▽西村商店(イノシシ対策にジビエ事業を展開)
【石狩市のモデル事業(3社)】
▽幸海ヒーローズ合同会社▽JOYCLE(小型アップサイクルプラントでごみと資源が循環する社会を目指す)▽エレックス工業(マイクロ波観測機器で密漁などの対策)
【小山由宇】