トヨタ自動車は26日、新型の高級セダン「クラウン」と主力車「カローラスポーツ」を発売した。インターネット接続で多様なサービスを受けられる本格的な「コネクテッドカー(つながる車)」にしたのが特徴。メンテナンス情報の提供や無料通信アプリ「LINE(ライン)」と連動したサービスなどを売りに、若年層の取り込みや販売以外の収益強化を図る。【小倉祥徳、竹地広憲】
トヨタ自動車のコネクテッドカーの主なサービス
新型車は専用通信機を標準搭載し、さまざまなサービスを実現した。走行時の車体不具合などのトラブル情報をトヨタの販売店などと共有し、オペレーターが走行の可否などを助言する。また、ドアの閉め忘れなどがスマートフォン(スマホ)に通知され、スマホでの遠隔操作でロックすることなども可能。LINEでの目的地設定や、ガソリンの残量確認もできる。
このほか、クラウンでは▽人工知能(AI)を使った音声対話で目的地を設定▽走行情報に基づいた安全運転の度合いで自動車保険料を割引--などのサービスも提供する。
新型クラウンは5年半ぶりの全面改良で、1955年の発売以来15代目、新型カローラも約6年ぶりの全面改良で66年の発売以来12代目。ともにトヨタの代表車種だが、買い換え需要が中心で顧客の高齢化が進んでいた。走行性能の向上を図ると同時にコネクテッドをアピールして「顧客層の若返りを図る」(開発担当者)考えだ。価格はカローラは213万8400円から、クラウンは460万6200円から。コネクテッドサービスは3年間は無料だが、4年目以降はそれぞれ年間1万2000円と1万6000円(いずれも税別)かかる。
トヨタのコネクテッドサービスは、これまでも「レクサス」など一部で提供してきた。今後はAIの機能充実なども図り、2020年までに日米でほぼ全新車に適用する方針。販売店と連携した保守修繕やコネクテッドの利用料収入なども強化したい考えだ。
トヨタはこの日、全国7カ所で新車披露会を開催。東京会場に登場した豊田章男社長は「新しいサービスが生まれる。一緒に未来のモビリティーを作りたい」と訴えた。
■KeyWord
コネクテッドカー
通信端末を搭載し、インターネットに常時接続(コネクテッド)する車。自車に関する情報に加え、他の車や信号などの情報配信を受けることで、詳細な渋滞情報や見通しの悪い交差点での事故回避機能なども実用化されている。
一方、外部からの不正アクセスなど、サイバー攻撃のリスクを指摘する声もある。
自動車メーカーにとっては、車両状態や道路状況などの膨大な情報を収集・分析でき、自動運転の開発にもつなげることもできる。このため各社が開発・販売を強化しており、民間調査会社の富士経済(東京)は、2035年の世界の新車販売台数に占めるコネクテッドカーの割合は96%になると予測している。