AIの進歩とともに、多岐にわたる分野で活用の可能性が急速に広がっている。医療では、膨大な情報を学ぶことができるAIの特性をがんの診断などに生かし始めた。また、各企業は小売りや融資、社員の採用や保育所の選考に至るまで、さまざまな場面でAIの活用を模索している
ICチップ飲み 体内情報発信
医療はAIによって飛躍的な進歩が可能とされる分野だ。がんなどの病気の早期発見・治療に貢献するだけでなく、医療費削減も可能になりそうだ。
米サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業「エンリティック」は、レントゲンやコンピューター断層撮影(CT)の画像から、がんなどの悪性腫瘍を見つけ出す画像診断システムを開発した。大量のデータに基づくAIの分析によって、人間の目では見つけるのが難しいような小さながんでも検出することができる。日本では、業務提携先の大手商社、丸紅が同社の参入を支援しており、数年後の販売を目指している。
世界最大の後発薬メーカー「テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ」(イスラエル)が2016年10月、米ラスベガスでのセミナーで行った発表に会場から驚きの声が上がった。血糖値を下げるための薬の中に極小ICチップを埋め込んで、患者が飲み込むと体内から必要な情報が発信され、医師が適切な治療や投薬を行うことを可能にするという将来構想だ。これらの医療の進歩が実現すれば、人の寿命は更に長くなるとの予測もある。
製薬業界では新薬の開発にAIが活用され始めている。膨大な化学物質データベースから、狙った効き目を発揮する物質の組み合わせを探り出すことで、薬の開発期間や費用を大幅に抑えることができるという。【秋本裕子】
人手不足解消へ 企業の「切り札」
企業はAIを活用した新たなサービスの開発を競っている。これまで人にしかできなかった仕事をAIが代わってすることで、深刻化する人手不足を解消するための切り札としての期待もかけられている。
富士通は昨夏、さいたま市の保育所入所の選考をAIにやらせたところ、職員が数日かけていた作業をわずか数秒で終わらせることができた。ソフトバンクは、新卒採用で応募者のエントリーシートをAIに評価させることで、採用に必要な作業時間を従来の4分の1に減らした。
JR東日本はコンビニエンスストアの人手不足対策として、AIシステムの開発による無人店舗の実現を目指している。