水難事故の大きな要因となっている離岸流の発生を人工知能(AI)など最新技術を使って知らせるシステムの実証事業が今月下旬、千葉県御宿町中央海水浴場で始まる。町が総務省の支援を受けて、コニカミノルタジャパン、中央大、日本ライフセービング協会と産学官の連携で取り組む。
町や同協会などによると、離岸流は、岸から沖に向かって局所的に発生する川のような帯状の流れで、最大で秒速2メートルにもなり、大人が泳いで抜け出そうとしても沖まで流されて水難事故につながることが多い。外洋に面した遠浅の海岸で発生しやすく、外房の海岸では頻繁にみられるという。県内で過去5年間に起きた水難死亡事故のうち、自然環境が要因の事故の64%は離岸流が原因とみられている。
実証事業では、海水が濁り、波が砕けるといった離岸流の特徴に着目。幅約300メートルの海岸に3台のカメラを設置し、海水面の変化を常時撮影して画像データをAIに蓄積・解析して学習させたうえで、気象状況なども加味しながら、離岸流の発生を自動検知できるようにする。
海水浴客のスマートフォンや、海岸を監視するライフセーバーの腕時計や眼鏡などの「ウエアラブル端末」に通知して、危険を知らせることを目指す。離岸流に巻き込まれた場合もすぐに覚知し、ただちに救助できるようにする。
レジャーの多様化などで、町内の海水浴場の利用者は過去10年で7分の1以下に激減している。町はシステム開発によって水難事故を抑制し、海水浴場のイメージアップを図りたい考えだ。町の担当者は「離岸流の危険情報を提供することで安全に楽しめる海岸をアピールしたい」と話している。【金沢衛】