【藤原洋のコラム】自動車とIoT/AIの融合へ向けて BBTがアストンマーティンと組んだワケ

2017年7月07日

当社は、アストンマーティン・ジャパン・リミテッド(以下「AM」)との間で、3月15日付で日本市場における包括的な戦略提携に基づく今後の事業推進(以下、「本提携」)に関する合意を行ったと発表しました。
今回の社長コラムは、その背景について述べてみたいと思います。
 
進化するインターネット・テクノロジーを追求する当社としての最大のテーマは、IoT/AIの最先端技術を使って新たな5G(第5世代)の通信インフラとデータセンターを最大限に利活用する応用分野の開拓です。その意味において、自動車産業は、最も大きく変化する分野であるといえます。
そんな想いもあって、産学連携の提携先である、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校で生まれた国際的な連携の輪は、写真に示すように、一昨年夏の英国アストンマーティン社のアンディ・パーマー社長との交流へと発展しました。とにかくこだわりのクルマづくりを続ける同社と、こだわりのインターネット・テクノロジーに傾倒する当社との相性は、最高だと直感しました。

 


 
自動車は、人間のための乗り物であり、安全性と快適性が求められます。両社の異分野のテクノロジーへのこだわりが、つながるクルマ「connected car」をはじめ、快適性に優れた次世代モビリティ製品・サービスの共同研究・開発を行っていく予定です。具体的には、最先端のIT分野におけるAR(Augmented Reality:拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実)を活用した新たな顧客体験(UX:User Experience)の提供につなげていきたいと考えております。また、目の前の共同事業として、AMが製造・販売する製品・サービスに関するデジタルマーケティングの共同運営等を行うことで事業収益へとつなげていく所存であります。
このたびの合意を契機として、当社は、英国のものづくりを代表するブランドであるアストンマーティンとともに、モビリティにおける新しいライフスタイルを開発・提案することで、当社の本業であるデータセンター事業において、今後本格化する5G時代では、スマートフォンなど従来型の端末をベースとしたビジネスに加え、自動車をはじめ、産業機器、スマートホーム、AIなど、新しい分野の市場創造を行ってまいります。
 
IoT/AIが創り出す新たなつながるクルマ「connected car」の情報発信拠点として、当社の目指す5Gデータセンターを位置付けていきたいと考えております。
 
【アストンマーティンの由来】
1913年創業で、英国バッキンガムシャーの村アストン・クリントン(Aston Clinton )の地名から採ったアストンと、創業者のライオネル・マーティン(Lionel Martin )のマーティンの組み合わせで生まれた名前とのこと。創業以来、品質を最重要視した車作りを手がけており、工場内に一切ロボットを使用せず、溶接作業はなくネジ締めで統一、塗装だけで100時間(量産型自動車工場は全工程で9時間だそうですが・・・)をかけ、シートの製造も全て内製(世界で唯一)、英国内の牛6頭から1台のシートや内装部を作るとのことに驚きました。叩き出し、塗装、内装、組み立てに熟練工の手で作られています。エンジンはドイツの自社工場でV8とV12を製造。基本的に採算性よりも「こだわりの手作り」を好む、「こだわりの顧客」を対象としていて、顧客は、6人の最終検査人のOKの後、基本的に工場を訪ねて「検収」を行います。年間出荷台数は、約4000台に限定しており、ほぼ完売の状態が続いています。
第二次世界大戦後には、こだわり製造から経営不振に陥り、経営者が頻繁に変わることとなりました。そして、実業家デビッド・ブラウンが経営していたことから、「DB」ブランドができました。しかし1970年~80代にオーナーが代わり続け、1987年にフォード・モーター傘下となり、デビッド・ブラウンを再び招聘し、その後、経営は安定(93年死去)。ル・マン24時間レースで好成績を収めたり、映画007シリーズでは、何度もボンドカーとして登場し、高い知名度を誇ります。一昨年10月封切りの新映画007にも久々にボンドカーとして登場しました。
2007年3月、WRCで著名なプロドライブ社の創設者でF1のB・A・Rにも関わったデビッド・リチャーズとクウェートの投資会社2社により構成される投資家グループに、一部のフォード株を残し、8億4800万米ドルで売却され、英国唯一の独立系の自動車メーカーとして存在しています。
【現行車種】: 本社受付前の写真参照


DB9(2004年-)、V8ヴァンテージ(2006年-)、ラピード(2010年-)、ヴァンキッシュ (2012年 - )。



 
【過去の歴史】: 年表と歴代の展示車の写真参照
●DB1(1948年-1950年)、DB2(1950年-1959年)〔アルフレッド・ヒッチコックの映画『鳥』でDB2/4ドロップヘッド・クーペ使用〕、DB3(1951年-1953年)、DB3S(1953年-1956年)、DBR1(1956年-1959年)〔1959年のル・マン24時間レースでロイ・サルヴァドーリ/キャロル・シェルビーのペアで優勝、同年のワールド・スポーツカー・チャンピオンシップを英国で初めて獲得〕、DB4(1958年-1963年)、DB4GT(1959年-1963年)、DB4GTザガート(1960年-1963年)、DB5(1963年-1965年)〔映画007『ゴールドフィンガー』『サンダーボール作戦』でボンドカー、『ゴールデンアイ』『トゥモロー・ネバー・ダイ』『カジノ・ロワイヤル』『スカイフォール』で使用、『キャノンボール』にロジャー・ムーアのマシンとして使用〕、DB6(1965年-1970年)、DBS(1967年-1972年)〔映画007『女王陛下の007』でボンドカー〕、V8(1972年-1989年)映画007『リビング・デイライツ』でボンドカー〕、ラゴンダ・ラパイド(1961年-1964年)●ラゴンダ(1974年-1990年)、●ヴィラージュ(1988年-1995年)、●ヴァンテージ(1993年-2000年)、●DB7(1994年-1999年)、DB7ヴァンテージ(2000年-2003年)、DB7ザガート・AR1(2003年)、●V12ヴァンキッシュ(2001年-2004年)〔映画007『ダイ・アナザー・デイ』でボンドカー〕、●V12ヴァンキッシュS(2004年-2007年)、●One-77(2008年-2012年)、●DBS(2008年-2012年)〔映画007『カジノ・ロワイヤル』ボンドカー〕、●ヴィラージュ(2011年-2013年)、●シグネット(2011年-2013年)、●V12ザガート(2011年-2013年)






 
シェイクスピアの故郷で、今も変わらぬ「工業製品」ではなく「芸術作品」にこだわり続けるアストンマーティンの本社工場を訪ねて、「経済」を超える「文化」、「量産の経済」を超える「文化の経済」を感じました。この土地で生まれ育まれるものは、前述の如く、シェイクスピアが400年以上も前に創作した戯曲とどこか共通点があるように思えました。
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藤原 洋(ふじわら ひろし)


株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO
1954年福岡県生まれ。1977年京都大学理学部卒業。東京大学工学博士(電子情報工学)

日本アイ・ ビー・エム(株)、(株)日立エンジニアリング、(株)アスキーを経て、1996年12月、(株)インターネット総合研究所を設立。同社代表取締役所長に就任、2012年4月、(株)ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEOに就任。
 

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