バーチャルリアリティー(VR=仮想現実)を利用し、あたかも故郷でおばあちゃんと食卓を囲んでいるような気分になる動画「バーチャン・リアリティ」を兵庫県南あわじ市が制作し、インターネット上で話題を集めている。市は「動画で田舎の温かみを知ってもらい、実際に足を運ぶきっかけになってもらえれば」と話している。【永井大介】
都会で孤食が問題となる中で、同市の食の拠点推進課は「南あわじ市などの田舎やそこに住む高齢者が、社会のいやしを担っていけるのではと考えて動画を作った」と話す。おばあちゃんと朝食を取る「朝ごはん」、家族や地元住民らも交えてにぎやかな時を過ごす「夜ごはん」の2編構成で、帰郷の雰囲気を演出した動画は、自治体のプロモーション動画としては16万回超と異例の視聴回数となっている。
地元特産品をVRのおばあちゃんと食べる
バーチャン・リアリティ朝食編では、食卓に南あわじ市の特産品が並ぶ中、おばあちゃんから「よう寝れたか?ぎょうさんおあがりや」などと優しく声をかけてもらえる=同市提供
「朝ごはん」の動画は3分。おにぎりや地元食材で作った「シャキシャキレタスのおみそ汁」「おろしたまねぎのちりめん和え」などの料理が並ぶ食卓を前に、おばあちゃんが「よう寝れたか? ぎょうさんおあがりや」「都会ではインスタントばっかり食べてるん違うの? 生野菜もしっかりおあがりや」と優しく声をかける。
「じいちゃんもな、ほんまに楽しみにしてたんやで。なあじいちゃん」とおばあちゃんの目線の先にスマートフォンを振ると縁側で碁を打つおじいちゃんが「よう帰ってきてくれた」と笑顔で帰省を喜んでくれる。
「晩ごはん編」では家族や近所の人も集まり、大勢で南あわじ市の特産品を囲む=同市提供
また、4分50秒の「晩ごはん」では、タマネギのステーキや淡路ビーフステーキ、「淡路島3年とらふぐ」の刺身などの特産品が並ぶ食卓を親戚やご近所さん総勢約20人で囲む。おばあちゃんは「仕事はどうなんや? 体を大事にして頑張ってなあ~」とここでも優しく声をかけてくれる。
疑似体験動画は、南あわじ市が国の地方創生加速化交付金2000万円を投入して作った。一人で食事する都会の「孤食」の人たちに、優しいおばあちゃんと食卓を囲みながら淡路島のおいしい「食」を味わってもらう内容の動画で、「孤食」の解消と市の特産品をPRしよう企画した。スマートフォンを専用キットに装着し、付属のゴーグルで動画を再生して使う仕組みだ。
ふるさと納税者にVRキットをプレゼント
VR動画は、朝ごはん編と夜ごはん編のほか、淡路島の渦潮を楽しめる「うずしおクルーズ」、淡路人形浄瑠璃を取り上げた「淡路人形座」の計4本ある。特設サイトには動画に登場した料理のレシピも掲載している。同市へのふるさと納税の寄付者(1万円以上)のうち、希望する先着200人にVRの視聴キットを贈る。
担当の同市食の拠点推進課は「南あわじにはおいしい特産品がたくさんあるが東京など全国での知名度はなかなか上がらなかった。動画を通じて豊かさに気付いてもらえれば」と話している。
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