毎日イノベーション・フォーラム分科会「農業の働き方IoT」

すべてのモノがインターネットにつながるIoTは、日本の農村風景をどう変えていくのか。1日に開かれた「第1回毎日イノベーション・フォーラム」の分科会「農業の働き方IoT」では、農業支援アプリを開発したTrexEdge代表取締役社長の池田博樹氏、産官学と農業者が共にICTを生かした町づくりに取り組む京都府与謝野町農林課長の井上雅之氏、25歳の時に他業種から新規就農した鈴盛農園代表の鈴木啓之氏、静岡銀行法人ソリューション営業グループ長の岩崎隆行氏が登壇し、「農業を魅力的な産業にするには」というテーマでそれぞれの取り組みを報告した。コーディネーターはインターリスク総研新領域開発室マネージャー上席コンサルタントの土井剛氏。フューチャーアーキテクト執行役員の宮原洋祐氏も講演した。

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登壇者はソリューション開発、農家、行政、金融--と立場は違うが、「農業の標準化、工程の可視化が重要」という点で認識が一致。岩崎氏は「農業は成長分野。経営状態や生産計画を『見える化』しているかは融資の際に重要視している」と強調した。

◇池田氏「農家の働き方のログ分析で利益の最大化可能に」

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農業のIoT化による働き方改革などを通じた地域の「スマートビレッジ構想」を掲げ、スマホで簡単に作業内容や時間、場所などを記録できるアプリ「AGRiOn(アグリオン)」を展開する池田氏。「個人の働き方のログの分析で、無駄な作業やほ場ごとの生産性の違いを把握し、利益を最大化する『標準モデル』を構築できる」と話した。土井氏は海外展開を視野に「詳細な作業記録があれば、国際的に浸透しているGAP(農業生産工程管理)認証も取得しやすくなる」と語った。

◇井上氏「IoTで農家の“勘”や“経験”を継承」
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また、後継者不足に悩む農家が多い中、井上氏は「人材育成は熟練農家のノウハウ継承が課題だ」と指摘。「経験や勘はなかなか聞きにくい、教えにくいものだが、細かな栽培環境やベテランの作業の進め方、判断基準などのデータをIoTで新規就農者と共有することで解決している」と話した。

◇鈴木氏「農業はクリエーティブ、もっと発信したい」
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若手農家で作る「全国農業青年クラブ連絡協議会」の代表を務めた経験を持つ鈴木氏は「『テクノロジーで農業をかっこよくしてやろう』という若い人が出てくれば農業はより魅力的になる。クリエーティブな仕事だということを、もっと発信していきたい」と熱を込めた。池田氏は「特に女性がどんどん活躍できると活性化する。ほ場に作ったオフィスに通勤して、ロボットやIoTで遠隔操作するようなイメージだ」と語った。

IoTを活用した農業への期待は高まる一方だが、池田氏が「テクノロジーはサポート役であって、これだけですべての問題を解決できるわけではない。未来の農業はどうあるべきか、地域全体で議論する必要がある」とクギを刺す場面もあった。

宮原氏は、AIやIoTを導入した生産性向上などの事例を提示。「農業からはじまり製造、物流、流通などの(付加価値を高める)バリューチェーンの各段階で、スマートな社会がどんどん発展していく。そこに消費者からの生の声を反映させ、プロセスの好循環が生まれる、という形が最終形態なのではないか」と展望した。【岡本同世】