毎日みらい創造ラボ

毎日イノベーション・フォーラム分科会「インバウンド観光とIoT」

「毎日イノベーション・フォーラム」の分科会、「インバウンド観光とIoT」では、ロケーションインテリジェンス事業を展開するナイトレイ代表取締役の石川豊氏、生体認証クラウドを活用したインバウンド事業を推進するLiquid Japan社長の保科秀之氏、日本政府観光局・元理事の吉田晶子氏が登壇、政府が目標とする「観光立国」に向けて、インバウンド観光の課題やIoTを活用した観光ビジネスの可能性について意見を交わした。観光産業ニュース会社「トラベルボイス」の鶴本浩司代表がコーディネーターを務めた。

◇鶴本氏「観光とテクノロジーは親和性が高い」

2016年、訪日観光客は2400万人を突破。政府はインバウンド観光を今後の日本経済成長の重要なエンジンと位置付け、訪日外国人数の目標を従来の「20年に2000万人、30年に3000万人」から「2020年に4000万人、30年に6000万人」と大幅に上積みし、受け入れ環境の整備も進めている。

吉田氏が、16年3月に開かれた「観光ビジョン構想会議」で設定された「観光先進国」になるための三つの視点「観光資源の魅力向上」「観光産業の革新」「ストレスが少ない旅行環境の実現」について説明、これに対して鶴本氏が「観光とテクノロジーは親和性が高い。デジタルをかけ合わせることで大きなビジネスチャンスが生じるのではないか」と応じた。

政府、企業とともにインバウンド向けサービスを展開するLiquid Japanの保科氏は、インバウンドを伸ばすには「IoTを使ってストレスが少ない旅行環境を実現することが大事」と主張。すでに、訪日観光客が宿泊先にチェックインする際、指紋生体認証によりパスポートを提示することなく本人確認を可能にするサービスの実証実験を実施していて、「参加者からは好評を得ている」と報告した。さらに、クレジットカード会社などと連携することで、「指をかざすだけで買い物ができるような“ストレスフリーな社会”を実現していきたい」と意気込みを見せた。

◇吉田氏「興味だけでは日本に来れない」

鶴本氏は、17年に観光庁が訪日外国人旅行者に実施したアンケートで、「無料WiFi環境が整備されていない」「多言語表示が少ない」「宿泊施設などでスタッフとのコミュニケーションが取れない」ことが「困ったこと」の回答に多かったことをあげ、「インバウンド観光の課題にデジタルは何ができるのか」と問いかけた。

保科氏は無料WiFi環境について「アクセスポイントは急速に増えている」との認識を示し「接続できる場所よりも利用登録が面倒なのではないか」と分析。その上で「経済産業省が進める『おもてなしプラットフォーム』事業では、外国人にIDを付与し、簡単に無料WiFiにアクセスできるシステムを作ろうとしている」と紹介した。

訪日外国人観光客の誘致のため、海外に日本の情報を発信してきた吉田氏は「外国人に日本の観光地の写真や映像を見せると興味を持ってもらえるが、それだけでは訪れてくれない」とし、「どうすればそこに行けるかがわかるよう、アクセス方法や周辺の宿泊施設、飲食店などの情報を海外から外国語で入手でき、インターネットで予約ができる仕組みを作り出すことが重要だ」と訴えた。

また、宿泊施設などのスタッフとコミュニケーションがとれないことについて、吉田氏は「交流プログラムで海外の学生を自宅に招いたおばあさんが、学生の持っていたモバイルの言語変換機能で簡単にコミュニケーションがとれた」というエピソードを披露し、「IoT技術が発展すれば、コミュニケーションの壁を乗り越えていける」と期待を込めた。

◇石川氏 SNSで観光客の「なぜそこに」がわかる

石川氏が代表を務めるナイトレイは、SNSや統計データをもとに「旅行者がどこで何をしているのか」といった訪日観光客の移動経路や滞在人数、1人あたりの消費額などのデータを企業や自治体に提供している。「外国人の動向に対する理解をしないと、効果的な戦略は立案できない」と主張し、「アニメの舞台を訪れる外国人が増えているが、こうした情報はSNSからつかみやすい。SNS活用で『なぜそこに来たのか』という感情の部分、消費につながるような情報も捕捉できる」と強調した。【寺田翼】