【AI】拡大で変わる教育現場 ロボットが英語の先生に

 さまざまな分野で急速に活用が進む人工知能(AI)が、教育に活用され始めた。話す言葉や書く文章、画像などのパターンも認識するようになったAI。学校や予備校などが取り入れることで、何が変わるのだろうか。現場を取材した。【水戸健一】

 東京都世田谷区の男子浪人生(18)は6月下旬、新宿区にある自習室で、国立大2次試験の数学の過去問題を解いていた。「確率」と「漸化式」の二つの単元にまたがる問題の解法がよく理解できないという。男子はタブレット端末を取り出し、学習動画配信サービス「スタディサプリ」のウェブサイトを開いた。

 「確率と漸化式」で検索すると、すぐにサービスが配信する七つの講義の動画が示された。どのタイミングで講師が該当のキーワードに言及したのかも表示されている。男子は「検索に手間がかからず、学習の時間を奪われることがない」と満足げだ。この検索の機能にAIが活用されている。

 スタディサプリは、進学情報サービスなどを手掛ける「リクルートマーケティングパートナーズ」(東京都)が、インターネットで講義の動画を配信するサービス。以前はキーワードが講義名に含まれなければ抽出できず、その場合は利用者が動画を見て目的の講義を探さなければならなかった。

 ●音声や板書を認識

 サービスを提供する側が人手をかけて動画を確認し、講義名だけでなく内容も紹介すれば利便性は増す。だが、登録されている講義は約4万本に上り、スタッフによる対応が難しい。解決策としてAIを導入し、講義の音声や板書の文字を認識させた。新システムは利用者がキーワードを検索すると、該当の講義をピックアップするだけでなく、講師がキーワードについて説明している場面や、板書している場面にピンポイントで移動することができるようになった。

 山辺哲生グループマネジャーは「動画を表示するだけでなく、ゆくゆくは重要度までAIが判別して提示できるようにしたい」と語る。

 そもそも、どのような学び方が効果的なのか--。同社がスタディサプリを通じて得た42万人分の視聴の履歴、テストの正誤などのデータをAIで分析したところ、単元の学習順に改善の余地があるとの結果が出た。

 高校の数学は1~3、A~Cがあり、「1、2、3」「A、B、C」の順に履修する。しかし、AIでデータを分析すると、必ずしも最適と言えない学習順が見つかった。例えば、AIは「数学3の『極限』から学んだ方が、数学2の『微積』の理解が早い」という結論を導き出した。

 それでも、山辺グループマネジャーは「AIの提案が妥当なのか精査する必要がある」と慎重だ。AIが導き出す結論や提案は、データの分析などに基づいており、子どもが置かれた環境や教師との関係性などは考慮されない。

 ●習熟度を判断

 現在、試行的に子どもの習熟度をAIに判断させ、それぞれ異なる宿題を出している学校もある。教師に負担をかけず、より細かい個別指導を実施できるが、「これをやった方が良いよ」という教師の一言が、子どもを動かすことが多いという。山辺グループマネジャーは「教師がAIと子どもの間に立ち、調整するという使い方が現実的では」と話す。

 2020年度に現行の大学入試センター試験に代わり、「話す力」が重視される英語の民間資格・検定試験の活用が始まる。そのため、子どもの発音を判定するAIも登場した。

 大手予備校の東進ハイスクールは今年3月、AIを活用した英語教材を使ったサービスをスタートした。利用者が個別のブースなどでパソコンに向かって英語の文章を読み上げると、区別が難しい「r」と「l」、「b」と「v」などの発音をAIが判定して、正しくなければ、画面で指摘する。利用者が使えば使うほど、AIがデータを蓄積して、より的確な判定ができるようになるという。

 ●英語話すロボット

外国語指導助手の代わりにネーティブの英語の発音を披露する人型ロボットの「NAO」。AIが搭載されると、子どもの英語を学ぶ環境がさらに向上する可能性がある=アウトソーシングテクノロジー提供

 また、IT系人材派遣会社「アウトソーシングテクノロジー」(東京都)は今年5月、小学校の外国語活動などで活躍する人型ロボットの提供を始めた。ネーティブの英語が話せ、財政的に外国語指導助手を採用できない自治体の需要を見込む。今後、AIを搭載し、子どもの発音のクセを学習して指導できるようになる可能性もあるという。