多拠点+複業=越境学習 #働くを考える vol.1 多拠点&パラキャリ イベントレポート(上)

 コロナ禍で働き方が大きく変わっています。毎日みらい創造ラボは10月24日、新しい働き方を模索するコミュニティ「Next Style Lab」と共催でオンラインイベント「多拠点&パラレルキャリアで人生をデザインする~働くを考えるvol.1」を開催しました。東京や地方を行ったり来たりする「多拠点リビング」と、複数の職業を持つ「パラレルキャリア」の実践者が、そうした働き方で得られた学びや、その一歩を踏み出した経緯を本音で語り、約50人が視聴しました。当日の内容を、3回に分けてお伝えします。

「越境」が仕事にシナジー 自己理解を深める

 まずは、東京と愛媛で2拠点生活をしながら、ファシリテーターという仕事を軸に東京の素材メーカー正社員▽フリーランス▽慶応大学大学院研究員▽地域のコミュニティマネージャー--という5足のわらじをはく磯村幸太さん(32)が、「2拠点居住とパラレルキャリアで越境する学び」と題して講演しました。

 磯村さんのお話のキーワードは「越境」。本来いる場から別の場へ、活動の主体を移すことを指します。仕事の場、生活の場を「越境」することで、関わる仕事にシナジーをうみ、自己をより深く理解することができると説明します。

 例えば、「会社で得た人脈をNPOで活用し、NPOで得た機会で研究、大学院で得た知識を個人事業で試して、個人事業であげた実績を会社にフィードバックできます」。各分野で得た経験や知識が、他の分野でもいかされ、キャリアアップにつながると指摘しました。

 自己理解では、「環境を変えることで、仕事に関する自分の価値観がはっきりする」と明言。パラレルキャリアを始めてからは、仕事は指示されるものという認識から、自分で創るものという認識へ▽働く条件は与えられるものから、自分で交渉するものへ▽人材育成は組織に考えてもらうものから、自分で考えて育成するものへ--などと、意識が変化したと明かしました。

3つの「越境」それぞれの効果は

 磯村さんが慶応大学大学院で研究テーマに据えているのも「越境学習」です。現在の磯村さんの仕事と生活においては、3パターンの越境が存在していると言います。東京と愛媛の仕事の越境▽東京と愛媛の生活の越境▽仕事全体と生活全体の越境--です。

 仕事の越境では、「東京でのファシリテーションの仕事をいかし、愛媛でもコミュニティマネージャーの仕事をすることができました。さらに愛媛で行政の仕事をすることが、東京での仕事の幅を広げることにつながっています」。

 生活の越境では、「土地の風土は、外から来る『風の人』と、その地域に住む『土の人』でつくられます。風の人のフラットな視点で地域の魅力を見いだし、土の人が(発見をいかして)文化をつくっていきます」と説明しました。そのためには、「風の人と土の人をつなぐ各地域のキーマン、つまり鍵の人が必要」と、内外の人を結ぶ役割を担う存在が必要とも指摘しました。

 生活と仕事の越境ではどうでしょうか。「仕事と生活が融合するワークライフ・インテグレーションや、ワーケーションと呼ばれるものがうまれます」。地方では時に人間関係が閉鎖的とも言われますが、「仕事軸でのつながりをつくることで、地域で生活しやすくなります。また、自然豊かな場所で暮らすため副交感神経が高まり、仕事の創造性や生産性につながっていきます」と、仕事が地域での生活を円滑にし、地域での生活が仕事の効率を上げる、相乗効果があると話しました。

ワークライフ・インテグレーション 自分への問い

 仕事と生活のバランスをとる「ワークライフバランス」が一時期盛んにとなえられました。しかし、「バランス」とは仕事と生活の効率的な時間配分を考える、という観点のため、仕事と生活が対立軸で捉えられることが多い現状があります。

 「仕事と生活をきっぱりと分けて配分するワークライフバランスから、それらを境界なく融合していこうという『ワークライフ・インテグレーション』という考え方が主流になってきています」

 「1人1人によって、適切な融合の仕方は違います。どうすれば、自分らしい仕事と生活の形をデザインできるのか。越境する中で、その問いがだんだんと自分の中ではっきりしてきます」

 東京のみで働く場合と違い、愛媛という別の場所に越境することで、「自分のワークの価値は何か、自分は何によって仕事に価値を出していくのか」を自問自答することになる。さらに、都市部の東京、地方の愛媛と全く異なる環境で暮らすことで、「自分のライフに何を求めるか、自覚的になる」と指摘します。仕事と生活が混じり合う時間を過ごすことで、「自分にとって働く意義は何だろう」と、自分への問いを繰り返すようになると説明しました。

 仕事と生活の境目がなくなっていくと、「仕事に意義を感じられていない場合には、働く意義がなくなり、働けなくなります。だから、自分にとって働く意義を問い直さざるをえなくなります」。

 そうして3パターンの越境を繰り返していくうちに、自分らしいワークライフ・インテグレーションの形が明確になるそうです。自分らしいワークとライフの形を見つけるには、「まず越境すること。そのための具体的なアクションは、旅に出ることかな」。最後に、2021年2月末リリース予定の、地域の「鍵人」とつながる旅を提供するサービス「meguribito」を紹介してくれました。

(続きはこちら)

次回イベントは11/16ランチタイム、テーマはワーケーションです!

 

〈記事〉今村茜

2006年毎日新聞社入社。経済部や統合デジタル取材センターでビジネスや働き方の取材を進める。自ら子連れでワーケーションを体験したルポ記事の執筆を機に、リモートワークやワーケーションなど新しい働き方を模索する新規事業「Next Style Lab」を社内で発足。2020年4月からは記者を兼務しながら「毎日みらい創造ラボ」で事業展開。Google News Initiative Newsroom Leadership Program 2019-2020 フェロー。3児の母。