進むインフラ老朽化 国交省、点検にAI活用へ

2018年1月16日

国土交通省は来年度から、道路にかかる橋やトンネルなどインフラの点検で土木技術者を支援する人工知能(AI)の開発を始める。高度経済成長期以降に整備されたインフラの多くは老朽化が進むが、維持・管理する自治体は人手不足に直面している。国交省は作業を支援するロボットの開発も目指し、作業の効率化で負担減を図る。
 
国交省によると、橋やトンネルを管理する国や都道府県、市町村などは、2014年7月から5年に1度の点検を義務づけられた。技術者が橋桁や壁面を近くから目で見たり、たたいて音を聞いたりしながら腐食やひび割れがないか確認している。軽微なものも含めて異常が見つかった場所を写真で撮影し、修復が必要か判断するが、トンネル一本で1万枚もの写真を撮るケースもある。

計画によると、インフラの点検作業をするドローンやロボットが異常を自動で見つけて撮影、AIが写真を基に修復が必要そうな地点を選別する。技術者は選別されたデータを確認し、最終的に修復すべきか判断する。来年度予算案に7100万円を計上しており、これまでに撮影された膨大な写真や技術者による修復の判断基準をデータ化し、研究者の協力を得てAIに学習させる。

国交省によると、16年度末現在、全国の道路には約72万の橋(2メートル以上)がかかり、約1万本のトンネルがある。17年末時点で築年数が分かる40万橋のうち老朽化の目安となる築50年以上の橋は23%だったが、33年3月には3倍近い61%に達する。築50年以上のトンネルもこの間に19%から41%に倍増する見込みだ。

一方、道路管理者のうち市町村の土木部門の職員数は13年4月時点で約9万1500人となり、ピークの1996年に比べ約3万人減少している。担当職員は5人以下が多く、兼務のケースもあるという。義務化から3年近く経過した17年3月末までに、市町村管理のトンネル2254本のうち点検が終わったのは557本しかない。

国交省は「多くの自治体は点検の負担を減らし、インフラの補修に費用をかけたいと考えている。AIなどを活用して人材不足に悩む自治体の負担減少につなげたい」と話す。【酒井祥宏】

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